


稲城駅からの通学路にある住宅の庭先にはすでに紅梅白梅が匂うように咲いていますが、一段上の丘陵に立つ大学のキャンパスではまだ白梅のつぼみがチラホラです。昨年来、新学部発足に備えて校舎の建設が進んでいるため大型車両の往来が激しく、メジロやウグイスなど野鳥の姿も声ぱったり絶えています。

屋外プールの手前で学園の周回道路を北に渡ると森林浴もできる保安林が広がります。今は冬枯れで林の中は明るく、あちこちに落ちているどんぐりが目につきます。拾って皮をむき口に入れると、ちょっと苦味のあるマカダミアナッツの味がします。これは雑木林の大部分を占める「コナラ」の木の実です。中に指でつまんでも持ち上げられない実があります。よく見ると根が出てしっかり土をつかみ、林の次世代が誕生しているのです。

林のちょっと開けたところに思いがけず椎茸(しいたけ)のホダ木が立てかけてあり、直径4~5センチの丸い頭がいくつか飛び出しています。いわゆる冬茹(どんこ)で、干し椎茸にしたら最高級品です。採る人もなく、木についたまま干からびてしまいそうです。
この保安林は人の手があまり入らない武蔵野の自然林で、庭師の技が見える照心館の築山とは趣が異なります。太陽を求めて天高く伸びた彼岸桜や山桜の枝にはびっしりつぼみがついています。正門への取り付け道路の桜並木とは違った美しさを三月中旬には見せてくれるはずです。(星野)
11月7日は二十四節気の一つ立冬でした。9月の秋分と12月の冬至の中間に当たります。例年、今頃になると大学館から真っ青な空に浮かぶ富士山が見晴らせるのですが、今年はどんよりとした、今にも雪を降らせそうな雲が低く垂れ込めています。正門に至る並木の桜も紅葉する前にほとんど葉を落としてしまいました。
キャンパスに目を移すと、黄色のツワブキの花が照心館前の池を縁取っています。つやのある濃緑色の葉の形がフキに似ているのでこの名がありますが、花は菊に似ています。今頃は枯れ果てているフキに対して、ツワブキは常緑、しかも茎に空洞はありません。ツワブキの茎はきゃらぶきの佃煮に変身します。
多摩丘陵の一角に位置するキャンパスは四季折々の日本の原風景をいつもどこかに見せています。大学館最上階から見ると、多摩の森にも黄色が目立つようになりました。4年次の学生は卒論や卒業制作に向けて追い込みに入っている今日この頃です。(星野)

10月4日、ホームカミングデーが行われ、源氏物語研究の第一人者である秋山 虔先生(元・日本文化学科主任)もご出席下さいました。当日、お時間をいただいて、秋山先生の心に残った駒沢女子大学のキャンパスの自然の美しさについて伺うことができました。その一部をご紹介しましょう。(11月5日)
照心館にて
「行雲流水」という禅語をご存知でしょうか。空を行く雲のように、そして大地を流れる水のように、あらゆるこだわりを離れてあるがままに生きる姿を意味する言葉です。ときに修行僧に対して親しみを込めて「雲水さん」と呼ぶこともありますが、日本人はこうした禅の思想などを通して、人間と世界の関わりや人生の歩み方などを考えてきたのです。
駒沢女子大学のキャンパスには、今日も爽やかな風が流れ、学内の日本庭園には涼やかな滝の音が響きわたっています。
この風は、どこからやってきて、そしてどこへゆくのでしょう。そしてこの水は、どこから湧き、どこへ流れてゆくのでしょう。こんな思いをめぐらせながら、風の色を見つめ、水のささやきを聞き分けることができたなら、風景だけではないあなた自身の美しい心が、きっと芽生えてくるはずです。(千葉)

キャンパスの中心に建てられた照心館の前の池で、蓮の花が咲き始めました。蓮は仏典との結び付きが強い植物です。坐禅堂を備えた照心館を背景に、淡紅色の花を咲かせる蓮、まさに絵になる風景といえるでしょう。本学では、このような心和む景色を暑い夏のあいだ見ることができます。

ところで、この池には「大賀ハス」も咲いています。大賀ハスとは、千葉市の縄文時代の遺跡で出土した古蓮の実のひとつを発芽させたものです。植物学者である大賀一郎博士が発見しその育成に成功したので、大賀ハスと命名されました。大賀ハスは根分けされ、現在、多くの土地で見ることができます。ちなみに、本学の大賀ハスは、平成9年、当時の駒沢学園父母の会会長が寄贈されたものです。
蓮の生命力の強さ、縄文の昔より現在まで連綿と続く命の連鎖には驚きを禁じ得ません。大賀ハスの花を見るたびに、太古のロマンの世界に引き込まれるのは、私一人ではないはずです。(小川)

本学園照心館前 2008年6月4日撮影
6月に入り、緑はいっそう濃くなりました。今年は例年より1週間以上も早く梅雨入りしたとのことですが、駒沢女子大学のキャンパスでは、雨の中に赤みがかったピンクのサツキの植え込みが目に鮮やかです。サツキはツツジ科の一種で、旧暦の皐月(さつき)(太陽歴6月ごろ)に咲くのでこう呼ばれているそうです。花の盛りには一直線に刈り込まれたサツキのピンクの花が図書館前の広場と池の間を彩ります。
一ヶ月ほど前には同じツツジ科のオオムラサキが学園の正門両側の土手一面を紫がかったピンクに染めていました。キャンパスを囲む樹林で高い声を張り上げていたウグイスも「チョットコイ、チョットコイ」とけたたましく叫ぶコジュケイに舞台を譲りつつあります。(星野)