
駒沢女子大学には、専任教員を対象とした「在外研究」制度があります。そこでの研究活動をご紹介いたします。
臼井実稲子先生は、2008年4月1日より1年間、「在外研究員」としてイタリアのフィレンツェにて研究活動を行うこととなりました。ここに紹介するのは、臼井先生からの「フィレンツェ便り(5)」です。
雨ばかりの今冬のフィレンツェにようやく春がやってきた。3月に入ると、青空の日が続くようになり、花々は色づき、鳥のさえずりが絶え間なく聞こえる。街を歩く人々の姿は、夜間の急な冷え込みを警戒してか分厚いコートやブーツが目立つが、日中は薄着でも寒さを感じることはなくなった。

近所の庭のミモザの花
イタリアで春の訪れを告げる花の代表はミモザのようだ。早い木では2月末に花が7分咲きになっていて、3月に入ると、ミモザの黄色の花はあちらこちらで見られるようになった。イタリアではこのミモザの花を、3月8日の国際婦人デーに女性に贈る習慣があるそうで、日頃は通りで傘や日用品を売り歩く人々の商品は、この日ばかりは一斉にミモザの花束にかわっていた。
また、義理チョコならぬ義理ミモザであろうか、イタリア紳士がミモザの花束をいくつか手にして足早に歩く姿を街でみかけた。隣家のイタリア人の話では、この日はレストランが満員とのこと。家事から解放された女性たちが、家族と外食を楽しむ日にもなっているようだ。
「花の都フィレンツェ」とはよく聞くフレーズである。滞在中、空しくそのフレーズを心の中で何度か繰り返していたが、ようやくそのことばに近い街になってきたようだ。実はそう考えるのは、花々のせいばかりではない。この数か月、フィレンツェの街は少しずつ改善されてきているように思える。

サンタ・マリア・ノッベーラ駅前の最近の風景
まず、フィレンツェの表玄関であるサンタ・マリア・ノッベーラ駅が整備された。イタリア版新幹線、エウロスターの今年1月からのさらなる高速化に伴い、電光掲示板や各種案内板が設置された。車両への落書き、車内の汚さは相変わらずだが、小田急ロマンスカーも超えるような新車両が普通列車に導入されていた。昨春初めてこの駅に立ったとき、汚さと喧噪ぶりにがっかりしたものだが、それは間もなく開通する路面電車の設置工事のためであったようだ。

駅に新設された分別ごみ箱
路面電車設置のため、路上生活者のたまり場だった広場が次第に整備されてきている。昨夏からは[オー ガニック]リサイクル用ごみ箱や灰皿が新たに置かれ、近隣諸国では多く見られる分別用ごみ箱が駅にも設置されるようになった。「あとはペットの犬の糞の始末を」と文句を言おうとしたら、10日ほど前のテレビのローカルニュースでこの問題を取り上げていた。1年足らずの私の滞在中の、フィレンツェの変化は目を見張るものがある。

研究室の窓からみえる桜(?)
在外研究も終わりに近づき、お世話になったEUIともお別れである。1年の総決算として今月末に発表をすることになり、ただ今卒業論文作成中の学生のような状況である。新学年のはじまりが9月であるこの国では、3月は卒業の季節ではないが、研究室の窓から見える桜(?)を見ながら、1月末に卒業旅行でフィレンツェに立ち寄ってくれた学生たちが学園を去る日も近いのだと考えている。
私の在外研究を実現して頂き、支えて頂いた国内外の方々に感謝しつつ、フィレンツェ便りを締めくくらせて頂くこととする。
臼井実稲子
2009年3月11日