ココロ♡deコマジョ③ 楽しみながら学ぶ箱庭療法

ひと抱えほどの広さの砂箱の中に、ミニチュアの人形や動物、建物、木々などを置いて自分の世界を作る。まるで砂場で遊ぶ小さな子どもに戻った気分になりそうですが、これもレッキとした心理療法の一つ、箱庭療法です。松岡ゼミでは、人の心の中の「無意識」に触れることを主要なテーマとして、いろいろな心理テストや心理療法について段階的に学びを進めています。4年生前期で行なうのが、箱庭療法。子どもだけでなく、青年や大人にも行なうことのある心理療法を体験的、理論的に学んでいます。

まずはゼミ生一人ひとりが実際に箱庭を作るという体験をしてみるというところからはじまります。そして、それぞれの箱庭体験をみんなで共有したところで、心理療法としての箱庭療法の実際について、文献をもとに学びます。遊んでいるだけみたいだけど、これで何がわかるんだろう? 自分の性格? それとも自分の未来? きっとどちらもすごく興味のあることでしょう。でも文献を読むと、思っていたのとはだいぶ違うという印象を持つかもしれません。あるいは、案外難しいことが書いてあるなと感じるかもしれません。箱庭を通して自分でも知らない自分に出会うって、どういうことだろう? 継続的に箱庭を作っていくと、まるで物語のように流れが生じてくるっていうけど、ほんとうかしら? 遊んでいるだけに見えて、けっこう奥が深い……。そんな声が聞こえてきそうです。

ちょっと難しい理論で頭を使ったあとは、気分一転、今度は箱庭に使うミニチュア作りをします。きめの細かい石塑(せきそ)粘土という素材を使って、こんなのがあったらいいな、箱庭に置いてみたいなというものを形づくっていきます。コアラやゾウ、犬、猫といった動物系、寿司やメロンパン、ハンバーグとポテトセットなどの食べ物系、人魚や宇宙人といった空想の世界の住人たちもいます。乾燥させたら次は色つけ。アクリル絵の具で色をつけると、だいぶそれらしいイメージになってきます。粘土も絵の具もずいぶん久しぶり――そんなことをおしゃべりしながら、最後はニス塗り。ずらりと並べると、ずいぶん賑やかな仲間たちができあがりました。

子どもの遊びのように見えて、案外奥の深い箱庭療法。実際に箱庭を作ったりミニチュアを作ったりしながら、箱庭療法に関する心理学の理論を学んでいくことで、人の心の複雑さや豊かさ、イメージのもつ重要性、そして変化や発達の可能性などを感じていただけるのではないかと思っています。

松岡 努

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