「大盤振舞」(おおばんぶるまい)は武家由来の食文化

日本人は、お祭りやお祝い事があると、金銭や食事などを振る舞う文化があります。特に、建物の完成記念のパーティーなどで、参加者にふるまわれる豪華な料理を「大盤振舞(おおばんぶるまい)」といいます。

この「大盤振舞」は、もともと鎌倉時代に各地の御家人が主人である将軍に差し上げる「椀飯(おうばん)」に由来することをご存知でしたか。

『世俗立要集(せぞくりつようしゅう)』という、鎌倉時代末期に成立した最も古い料理書です。同書には、一二二一年の承久の乱以降の武士の食膳が図入りで示されています。図を見ると、膳の上に、梅干、打鮑、海月(くらげ)の三種に、調味料の塩と酢が描かれてあります。また酒は必需品でした。この当時の武士の食事が偲ばれます。一般的に、この当時の武士や庶民は、玄米とイノシシ・鹿・ウサギ・野鳥などの獣肉を自由に摂取し、一日二食であったといいます。

これに対して、その年のはじめに、各地の御家人たちは将軍家に対して椀飯として、長生きの願いを込めて鮑、雲丹(うに)、蛤(はまぐり)などの珍味をはじめ、数えきれない豪華な料理を差し上げていました。今でいえば、高級料亭で出される御膳料理ともいえるでしょう。

現在、「大盤振舞」といえば、パーティーの主催者が来賓など、多くの人に振る舞う豪華な食事をさしていますが、もともとは鎌倉時代の御家人が将軍に、主従関係を明らかにするための行為として行われていた食事だったのです。

このように、日頃何気なく使っている言葉の意味や由来を深く掘り下げていくと、日本文化の裾野の広さや奥深さを知ることができます。

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(日本文化学科 皆川 義孝)

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